接客したのに「ネットで買うので」と言われ無念の涙を呑んだことのある販売員の皆さんへ

あれは、東京都心でも大雪の予報が出ていたくらいの、寒くてどんよりとした日のことでした。

私が出勤した百貨店館内は特別閑散とし、通路を行き交うのは社員ばかり。お向かいのスタッフさんとは、目が会うたびにお互いやりきれない表情の交換をしていました。

そこへ、ひとりの40代くらいの男性のお客様がご来店されました。

ブランドを確認されたのでお話をうかがうと、「雑誌で見て、ネットで調べてブログを読んで、欲しくなったので実物を見たくて来た」とおっしゃいます。

さらにうかがうと、読んでくださった商品紹介ブログはちょうど私が書いた回のものでした。うれしくなってお礼をお伝えすると、記事を褒めてくださりながら「知ってるよ、ココがこうなんでしょ?読んだよ」「昨日の夜、暗記するほど読んだから寝不足なんだよ」と笑っていらっしゃいました。

そのあと十分に商品をご覧いただき、他と比較もしていただき、最後に「コレにしようと思うんだけど、奥さんに許可をもらわないといけないから、取っておいてくれる?」と言われ、その日はお取置きを承りました。

数日後、同じお客様が奥様を連れて見え、お取置きしていた商品を前にしながら奥様にプレゼンを展開されます。私はその横で心の中で全力で応援しながら見守ります。

奥様の口から出た結果は

「うん…いいんじゃない。でも、通販で買ってよ。ポイント貯まってたでしょ」

!!!!!

その後、ちょっとした夫婦間会議が開かれていましたが、結局、あまり使わない通販サイトで期限が迫ったポイントが何千分円かあるとのことで、ご夫婦はそのまま売場を後にされました。ご主人は何度か振り返って、「ごめんね!」という仕草をされたので、私は「大丈夫です!」の仕草を返しながら見送りました。

「これでブランドのものがまたひとつ、お客様の手に渡って使っていただけるようになるんだ、よかったじゃないか。きっと今日の流れの逆もあるはずだし、これまでもあったはずだ。お客様にとって一番いい買い方を選んでもらえてよかったじゃないか」と自らに言い聞かせながら…。

そうは言っても、現役販売員の皆さんなら、この日の私の虚無感を分かっていただけますでしょうか。しかも私は当時、店頭の売上歩合で報酬をいただいておりまして、売れなきゃゼロなんです(苦笑)。

こんなことが店頭ではたまに起きるものですから、頭では分かっているけれど、店頭とは分断されながら実はしっかりと顧客を共有しているECに対しては、ちょっとだけ疎ましく思う気持ちがありました。

しかし先日、そんな気持ちを拭い去って、前向きに関わっていきたいと思える書籍に出会ったので、今日はそれに触れながらお互いの立ち位置のとらえ方や関係性を考えていきたいと思います。

 


極力フェアな関係をつくることで「ECも直営店のひとつ」くらいの気持ちになれる


 

先にご紹介しておくと、私が読んだ本はこちらです。

エバンジェリストとは、IT業界の複雑で難しそうなことを分かりやすく説明し啓蒙する役割の人のことで、著者の川添さんは、そのお立場にいながら実際に関係各社のEC事業を売上UPに導き、成果を上げていらっしゃいます。

私が販売員を始めた約20年ほど前はまだ、ECといえば楽天市場とAmazon.co.jp(日本語版)が誕生したばかりくらいの頃でした。

その後だんだんECは増えていきましたが、それでも10年ほど前までは「買いに行くには遠いから」という、お取り寄せ感覚での使われ方の向きが強かったように記憶しています。

しかしそのうち、小売各社がECを持っていることが当たり前になり、スマホの普及やアプリの充実もあって、ECは日常使いするツールとして定着しました。

EC vs 実店舗、のような意識があることを否めなくなってしまったのは、その頃からです。

販売員としてECの変遷を体感してきた方の中には、私のように「店頭の努力を、手軽さと値引き・割引でかっさらっていくEC」というイメージがわずかに拭い去れない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかも、ECの中の人の顔が見えず、ブランドに対する考え方も分からないとくれば、歩み寄りようもありません。

しかしこの本を読んで、上手くいくECには、店頭と同じようにお客様目線を重視して、それに合った表現やサービス提供を考え、物販ECはメディアではなく小売という意識のある方々が入っていらっしゃるんだとわかると、急に親近感が湧いてしまいました。

そして、うまく相乗効果を発揮してブランドに寄与していくためには、お互いがフェアでいられる関係づくりが大切だと感じました。

 


ブランド・業態のメインターゲットとECのそれは合致しているかが○×判断の目安


もちろん、この本を書かれた川添さんが私や皆さんの関わるブランドのECの中に入ってくださっているとは限らないのですが、成功への導きかたは大変参考になります。

なかでも最初に、実店舗ありきのECにとって大切なこととして、「客観的に見て実店舗とターゲットがずれていないこと」、「ECでの購入の付加価値の前に実店舗での購入体験に近いこと」が挙げられています。

あなたが所属するブランド、もしくは気になるブランドのECは、いかがですか?

実店舗のイメージと、ECのイメージは同じでしょうか。実店舗に比べて陳腐なEC、または逆に、実店舗に比べてECが高級に見えすぎたり、実際に買っている顧客にとってわかりづらいイメージにはなっていませんか?

実店舗で購入するのと同じように、発売日やサービスは足並みが揃っていますか?

実店舗ありきのECの場合、ECを直営店のひとつとしてとらえたときに、違和感が出るようではよろしくないということです。

 


理想と現実のターゲットにズレを生じさせないためには


ECが実店舗と様子がかけ離れているならば、その原因は、ECがビジュアルばかり追求してお客様を見ていないことや、実店舗がEC運用に必要なお客様の購買行動やニーズの変化の情報を正しく上げていないことが考えられます。

つまりはコミュニケーション不足です。

「店頭とは分断されている感じ」が、実店舗ありきのECを直営店のひとつとしてみると、それではいけないことに気がつきます。ECも買ってもらえてこそです。

もし所属ブランドのECに距離を感じるとしたら、店頭に立つ販売員は改めていまのお客様の状況の報告が必要ですし、EC担当の人は、その話をよく聞く必要があると思います。

立ち位置が違うと、なかなか理解も進まないかもしれません。しかし、何度でもあきらめずに関わることが、お客様に正しく効率的に情報を届けるための最短の近道になり得るのではないでしょうか。

 


お互いすすんで理解しよう


このように考えを進めてくると、実店舗どうしでは週次報告書や売上データ詳細の共有、また店舗間でのお客様紹介のやり取りなど、お互いの売上UPのためのコミュニケーションが日常的に行われているのに、ECはずいぶんと隔離されたものだなと感じます。(聞いても来ないですし…)

日常の人間関係もそうですが、こちらの言い分を「どうせ聞いてもらえない」とあきらめてしまったり、「なんでわからないんだ」と怒ってしまったりすると、相手には何も伝わらないし、何も伝えてもらえません。

ECも実店舗も、ともに人が動かし、お客様が買っています。買ってもらえるということは、またひとつブランドの商品が世に出て日の目を浴びることになるのです。これは共通の目的です。

店頭はショールーム化するという考えもありますし、今後それぞれの属性にあった形で実店舗もECも進化していくことが求められます。

ブランドにとって、いかに最適な変化を遂げられるかは、関わっている人たちのお互いを尊重し合い理解しようとする気持ちにかかっていると言えます。

デジタルかアナログかの話ではなく、デジタルをつなぐのはアナログなんだなと、あらためて考えさせられる本でした。

 

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